カルカッタ報告(37)8月27日チッタガールへ②


 バスが出発して一安心したわたしは、用意してきた朝食を食べることにした。昨日の晩、ホテルの向かいの売店で買っておいた小型の食パンだ。カルカッタの街を歩いていると、街のあちこちで間口2mほどの売店を見かける。ちょうど日本の駅にあるキオスクのような、雑貨や食料品など日常生活に必要な最低限の品物を揃えた小さなお店だ。そのようなお店で、食パンやフルーツを混ぜたスポンジ・ケーキなどを買うことができる。食パンと言っても、インドの食パンは日本のものの3分の2くらいの大きさしかない。切り方も薄切りだ。それが、1斤30円くらいで売られている。
 食パンと水で本当に簡単な朝食を済ませたあと、しばらく目を閉じてうとうとした。窓から外を見たいと思っても、窓には日光よけのシールが貼られていて外がよく見えない。道が悪いし、クラクションの音などもするので眠ることはできなかったが、少しまどろむくらいのことはできた。チッタガールまでは、順調にいけば1時間くらいで着くとのことだった。
 昔は、このようにボランティアでパスを仕立ててチッタガールに行くというようなことはなかった。ボランティアの人数が少なかったこともあるが、シアルダー駅から電車で行くのが普通だった。電車ならば、30分ほどで着く距離だったと記憶している。カルカッタに長期滞在してボランティアをする場合、電車に乗ることはほとんどないが、このチッタガール行きが数少ない電車旅行の機会だった。1年あまりのカルカッタ滞在中、3度くらい電車でチッタガールに行ったのではないかと思う。
 30分くらい走ったところで窓の外を見ると、バスはまだ街の中を走っているようだった。やや緑の木々が多く見られるようにはなってきたが、田園という感じではない。チッタガールは田園地帯を過ぎたところにあるという昔の印象があったのでまだまだ遠いなと思っていると、しばらくして街中でパスが止まった。チッタガールに到着したのだ。どうやら、カルカッタの街は郊外に向けて拡大しているらしい。
 バスが止まった大通りから細い道をぞろぞろ列を作って歩いて行くと、先の方にそれらしい建物が見えてきた。だが、どうも見覚えのない建物だ。電車の線路に沿った場所のはずだったが、線路も見えない。おかしいなあと思いながらも、この施設を担当している「神の愛の宣教者会」のブラザーたちに案内されるまま建物の中に入った。
※写真の解説…シスターたちのサリーを織る患者さん。1994年撮影。