バイブル・エッセイ(100)病の霊


 安息日に、イエスはある会堂で教えておられた。そこに、十八年間も病の霊に取りつかれている女がいた。腰が曲がったまま、どうしても伸ばすことができなかった。イエスはその女を見て呼び寄せ、「婦人よ、病気は治った」と言って、その上に手を置かれた。女は、たちどころに腰がまっすぐになり、神を賛美した。
 ところが会堂長は、イエス安息日に病人をいやされたことに腹を立て、群衆に言った。「働くべき日は六日ある。その間に来て治してもらうがよい。安息日はいけない。」しかし、主は彼に答えて言われた。「偽善者たちよ、あなたたちはだれでも、安息日にも牛やろばを飼い葉桶から解いて、水を飲ませに引いて行くではないか。この女はアブラハムの娘なのに、十八年もの間サタンに縛られていたのだ。安息日であっても、その束縛から解いてやるべきではなかったのか。」
 こう言われると、反対者は皆恥じ入ったが、群衆はこぞって、イエスがなさった数々のすばらしい行いを見て喜んだ。(ルカ13:10-17)

 イエスが「病の霊」すなわちサタンを追い払うと、18年ものあいだ曲がっていた女性の腰がまっすぐに伸び、女性は神を賛美しました。
 現代社会で女性の腰が曲がっている原因をサタンと考える人はあまりいないでしょうが、現代でもサタンによるとしか思えない病気があります。わたしはそのような病気を患った人からときどき相談を受けますが、昨日も一件の電話がありました。20代の女性からでしたが、この13年間、ずっと幻聴に悩まされているというのです。医師からは統合失調という診断を下されたので、その薬を飲んで一生懸命に治そうと頑張ってきたが一向に良くならない。これは、もはやサタンの仕業としか考えられないというのです。
 この話を聞いて、わたしも確かにそうかもしれないと思いました。ですが、なぜ神に救いを求めるこの女性の願いを神は聞き入れてくださらないのでしょう。サタンを追い出してくださらないのでしょう。そう思いながら今朝この聖書の箇所を読んでいたとき、病を癒された女性の神を賛美する姿が心に強く響いてきました。
 18年間苦しみ抜いた末に、ついにイエスと出会って癒されたこの女性の感謝は一体どれほどのものだったでしょうか。おそらく、他の誰もこの女性ほどに神を賛美することはできないといえるほど、この女性は喜びと感謝に満たされただろうと思います。この女性の苦しみは、すべてこの癒しのため、喜びにあふれて神を賛美するためだったのではないかとさえ思えるほどです。
 思えば、イエスもこの世に働くサタンの力によって十字架につけられ、苦しみを味わいました。しかし、その苦しみは復活における神への賛美と表裏一体だったのです。心の病など原因不明の病で苦しむ人々についても、まったく同じことが言えるでしょう。彼らもサタンによって病という十字架につけられましたが、その苦しみは復活のときの神への賛美と表裏一体なのです。「病の霊」であるサタンは、結局のところ神の栄光を現わすために無駄な努力をしているにすぎないのです。
 原因不明の病で苦しむすべての人々が、復活の希望を支えに病の十字架を担っていくことができるよう、心から願わずにいられません。
※写真の解説…ハンセン氏病で指を失った女性。1994年、チッタガールのハンセン氏病センターにて。