カルカッタ報告(44)8月27日インド博物館①


 サイクル・リキシャーは、あちこちにある道のへこみを注意深く避けながら進んでいった。サダル・ストリートに入り、ブルー・スカイ・カフェの横を過ぎた辺りで博物館の倉庫の赤いレンガの壁が左前方に見えてきた。入口は大通りに面しているのだが、サイクル・リキシャーは大通りに出ることができない。わたしたちは、赤い壁の辺りでリキシャーを下りて歩くことにした。
 インド博物館は、まるで大英博物館を思わせるような造りの白い巨大な建物だ。博物館が創立されたのは1814年、今の建物に移ったのが1878年のことだという。常設の博物館としては、世界で9番目に創立されたそうだ。展示品の数、百万点を越えるというインドでも有数の博物館だ。展示の範囲は、自然科学、宗教芸術、動物学、植物学、民俗学など多岐に渡っている。文化都市カルカッタの誇りの1つと言っていい。
 しかし、それにもかかわらずわたしはこの博物館にあまり興味を持てなかった。展示品の数は確かに多いのだが、あまりにも多すぎてどれを見ていいのかよくわからない。それに、展示の仕方に一貫性のようなものが感じられず、一体何のための展示なのかもよくわからない。展示品の保存状況にも問題があり、絵画などはほとんど色あせてしまっていて何が描いてあるのかよくわらない。
 珍しい動物の剥製や、クジラやマンモスの骨格などには驚嘆するが、それ以外の展示はどれも今一つというのがわたしが昔受けた印象だった。わたしと一緒に行った人たちもだいたい同じような感想を持ったようだった。「一体なんなんだったんだろう、これは」というような感じだ。
 まあ、それも一度入ってみなければわからないことなので、ともかくわたしたちは入場券を買って中に入った。みんな興味がある分野が違うので、1時間後に再び玄関ホールで集合ということにしてわたしたちは思い思いの方向に散らばった。
 わたしはまず、ヒンドゥー教や仏教の彫刻が展示してある部屋へ行くことにした。最近は日本でも仏像を見て歩くことがあるし、仏教の源流であるインドでどんなブッダの像が拝まれていたのか興味があったからだ。
※写真の解説…インド博物館の中庭。