カルカッタ報告(73)8月28日カーリー寺院②


 寺院の境内に入る時、入念な荷物チェックがあった。ここのところ、イスラム教徒によるテロが多いので警戒しているのだとポーロさんが説明してくれた。確かに、昨年のムンバイでの同時多発テロに代表されるように、近頃インドでは宗教がらみのテロの事件が多いようだ。
 境内で寺院の由来などを説明した後、ポーロさんはわたしたちをいけにえの儀式が行われる場所に連れて行ってくれた。いけにえの儀式は午前中だけなので何もしていなかったが、それでも血の匂いが辺りにただよっているようで気味が悪かった。ポーロさんはわたしたちの気分を察したらしく、すぐにわたしたちを境内から連れ出してくれた。
 境内を出て、わたしたちは「死を待つ人の家」に向かった。時刻はもう6時近くなり、道端の街灯に明りがつき始めていた。玄関のドアが開いていたので中に入ると、入って右手の1段高いところでシスターと数人のボランティアが帳面を見て何かを話し合っていた。ポーロさんはすっかり顔なじみらしく、シスターに会釈をしてからこの家の由来をわたしたちに説明し始めた。ポーロさんが連れてきた観光客の中にわたしがいるのに気づいくと、シスターは驚いて「どうして神父さんが」とわたしに尋ねた。わたしは、「この人たちはわたしが日本から一緒に連れて来た信者さんたちなんです」と説明すると、どうやら納得してくれたようだった。
 メンバーたちは、初めて入った「死を待つ人の家」の内部にじっと見入っていた。カルカッタの貧困の象徴ともいうべき光景を前にして、みな言葉もないようだった。10分ほど中の様子を見学して、わたしたちは車に戻ることにした。外に出ると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。   
※写真の解説…夕暮れ時のカーリー寺院参道。