マニラ日記(10)ナガラヤ


9月27日(月) ナガラヤ

 昼食のあと、わたし以外の第三修練者たちはマニラの北西部にあるスラム街、ナボタスでの実習に出かけて行った。わたしは相変わらず、臥せったり、起きて本を読んだりという生活を続けている。幸いなことに2日前から夜の発熱は収まったのだが、体のだるさや咳がとれないため長時間起きているのはまだ難しい。
 夕方、すこし体に力が戻ってきたので、大学の向かい側にあるスーパーに買い物に行ってきた。体調不良のせいかここのところフィリピンの長粒米のごはんが食べづらいので、何かお腹の足しになるようなものを見つけようと思ったのだ。
 何かないかなと思ってスーパーの食品売り場をゆっくり歩いて行った。ここのスーパーは、日本のいわゆるスーパーの何倍もの規模があり、品数も豊富だ。これだけの物があれば、日本製品もあるだろうと思って探していくと、まず「カップ・ヌードル」を見つけた。味付けはフィリピン風にしてあるようだが、日清の製品に間違いがない。お菓子売り場では、日本の「かっぱえびせん」と同じ味の「おいしい」というフィリピンのお菓子も見つけた。
 しばらく進んでいくうちにわたしは思わず「あっ」と声を上げた。昔フィリピンに住んでいた頃、本当に助けられたお菓子「ナガラヤ」を見つけたのだ。言葉の意味はよくわからないが、なにしろ袋に日本語のカタカナで「ナガラヤ」と書いてある。ピーナッツの周りに小麦粉で厚い殻をつけた塩味の豆菓子で、日本ならおつまみセットのようなものの中に必ず入っている。
 これに一番助けられたのは宣教実習でミンダナオ島に行ったときのことだ。奥地の村では食事がとても貧しく、カエルやネズミの肉や豚の血の煮凝りのようなものでさえ大切なタンパク源だった。わたしはいつもお腹を空かせていたが、近くの街に買い出しに行ったときにたまたま「ナガラヤ」を見つけた。わたしは、天の助けと思ってたくさん買い込み、お腹が空いたときに部屋でこっそり食べていた。「ナガラヤ」がなければ、ミンダナオ島の奥地から無事に帰ってくることが果たしてできたかどうか。
 そんなわけで、「ナガラヤ」は今日の最大の収穫と言っていい。今も食べながらブログを書いているが、これで栄養不足はだいぶ補われるだろう。体に力をつけて、一日も早く病気を克服したいものだ。
※写真の解説…大学の中の小道。