マニラ日記(12)絶えざる御助けの聖母Ⅱ


 教会では、「絶えざる御助けの聖母」の御絵を前にして聖体礼拝が行われているところだった。サッカー・グラウンドほどの広さの聖堂を、おびただしい数の信者さんたちが埋め尽くしていた。少なくとも1,000人はいるだろう。わたしの到着を入り口で待っていてくれた第三修練者に案内されるまま立ち見の人たちの間を縫って進み、なんとか仲間たちと合流することができた。
 立ったまま、わたしも人々の声に合わせて祈ることにした。聖堂のあちこちに大きなテレビ画面が備え付けられ、今祈られている祈りの言葉が映し出されるので、それに合わせて祈ればいい。多くの人は、手元に小さな冊子を持っていて、それを見ながら祈っている。
 荘厳な静けさの中に、聖母の助けを求めて祈る無数の人々の祈りの声だけがこだましていた。興奮や熱狂は一切なく、みな目を閉じてただひたすら聖母に向かって懸命に祈っている。まさに、人々の祈りが聖堂に満ち溢れているという感じだった。祈りの空気を吸い込みながら、わたしも心の底から聖母に祈らずにいられなかった。
 「絶えざる御助けの聖母」の御絵に刻まれた聖母のぬくもりは、一切の理屈を超えてまっすぐにわたしたちの心に届き、魂を根底から揺さぶるほどの力を持っている。そのぬくもりは、十字架や復活の神秘に近寄りがたさを感じる人々の心でさえ温かく包み込み、イエスのもとへといざなっていく。これこそ、まさに聖母崇敬の意味だろう。すべての人が聖母を通してイエスの元に運ばれ、救われていくのだ。
 一心不乱に祈る人々の背中を見つめながら、わたしはフィリピンにおけるカトリック信仰の成熟をひしひしと感じた。この国では、信仰が人々の生活に完全に根をおろし、人々の生活の中に生きている。人々はただ神の救いだけを願い、信じ、心の支えにして生きているのだ。わたしもこの人々共に神の前にひざまずき、共に祈り続けたいと思う。
※写真の解説…隣接するレデンプトール会修道院の居間にかけられた、「絶えざる御助けの聖母」の御絵のレプリカ。オリジナルはローマにあるという。