福島はいま1〜訪問の動機
「年の黙想」を終えた後、埼玉の実家を経由して福島に向かった。福島に行くのは、4月の初めに二本松市といわき市を訪ねて以来4ヵ月ぶりのことだ。今回も二本松市を拠点とし、8月23日から25日までの3日間、福島の各地を回って歩いた。
今回、何よりも気になっていたのは放射能の被害のことだった。前回は地震と津波のことが何より心配で、友人たちの安否を確かめるために出かけたが、原発事故の深刻さがしだいに明らかになってくるにつれて今度は放射能のことが気になり始めた。放射能の危険性について一体誰が本当のことを言っているのか分からないようなこの混沌とした状況の中で、人々はこの現実とどう向かい合い、どう生きているのだろうか。懸命に生きようとしているその人たちのためにどんな支援ができるだろうか、その答えを見つけることが今回の訪問の動機だった。
そのために選んだ訪問先は、浪江町からの避難者のために二本松市内に造られた仮設住宅、原発から30キロ圏内に存在する唯一のカトリック教会である原町教会、そして壊滅の危機に瀕している福島の農業を守るために必死の取り組みを続けている二本松農園の3ヵ所だった。実際に行ってみて初めて分かったこと、考えさせられたことを報告したい。「だから安全だ」、「だから危険だ」ということではなく、人類がこれまでにほとんど経験したことがないほど困難な状況の中で生きる人たちの「いま」を伝えられればと思う。
※写真の解説…計画的避難区域に指定され、人気の絶えた飯舘村。