祈りの小箱(119)『誰かのために与えられた力』


『誰かのために与えられた力』
 自分のためにやろうとするとうまく行かないことでも、誰かのためにやろうとするとうまくいく、そんなことがときどきあります。例えば、どこかで講演会を頼まれたとき。うまく話してみんなを感心させてやろうとか、今日は新聞の取材が来るからできるだけかっこよく見せようとか、そんなことを考えていると決してうまく話すことができません。うまく話そうとすればするほど上辺だけの話になって、人々の心に届く言葉を語ることができないのです。
 ところが、自分のことを考えるのをやめ、聞きに来てくれる人たちの顔を想像し、その人たちがどんな悩みを抱えながら日々生活しているのか、どうしたらその人たちの心に神様の愛を届けられるのか、そう考えてよく祈ってから話すと、自分が思っていたよりはるかにうまく話せます。それは、自分でもまったく驚くくらいで、どこから言葉が出てきたのだろうと思います。
 このような体験から近頃しみじみ思うのは、わたしたち人間の中には、自分のために決して使うことができない特別な力が隠されているのではないかということです。自分のために使おうとすると決して動かないのだけれど、誰か大切な人を助けるために使おうとすると突然、動き始める力。誰かを助けるためだけに与えられた力が、わたしたちには与えられているようなのです。
 それは、愛だけによって起動する力と言ってもいいかもしれません。自分のことを忘れ、誰かのために役立ちたいと思ったときにだけ起動する力なのです。自分の力を100%発揮したいなら、自分のことを考えるのをやめ、誰かへの愛のために動く以外にないのです。これはとても興味深い事実だと思います。よく「自己実現」といいますが、どんなに自分を磨いても、自分の力を100%発揮して本当の自分になることはできないのです。本当の自分になりたいなら、逆に自分を捨てて、誰かへの愛のために生きる以外にないのです。すべての力を発揮して本当の自分になるために、真の意味で自己を実現するために、まず愛することを学びたいと思います。
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