祈りの小箱(128)『神様のストップ・サイン』


『神様のストップ・サイン』
 若いころ、インドで結核にかかったことがあります。マザー・テレサのもとで、ボランティアとして働いていたときのことです。当時わたしは、マザーの勧めもあってインドで修道会に入り、神父になろうと考えていたところでした。実際、修道院で見習いとして一緒に生活も始めていたのですが、ある時から毎日、午後になると微熱が出るようになったのです。初めはマラリアかと思い、その薬を飲んでいたのですが、微熱はちっともおさまりません。やがてある日、咳をして口を押えたとき、手についた痰に血が混じっているのに気付いたのです。大急ぎで病院に行き、レントゲンをとってもらうと、重症の結核だということがわかりました。
 今から思えば、あの結核は神様のストップ・サインだったのだろうと思います。何もわからないまま闇雲に神父への道を歩き始めようとしたわたしを、神様が病気によって止めてくれたのです。きっと、あのまま無理をしてインドにとどまっていたとしても、いい結果は出なかったでしょう。日本に帰って病気を治し、祈りの中で十分に識別をしたからこそ、迷いなく神父へ道に歩みだし、ここまで来ることができたのだろうと思います。
 神様は、ときに思いがけない形でわたしたちの人生にストップのサインを出します。それ以上先に進んで大きな間違いに陥らないように、厳しい試練や病気、挫折など、乗り越えがたいような困難を与えてわたしたちをストップさせるのです。我を通して無理にその試練を乗り越えようとすれば、その先に待っているのは取り返しがつかないほどの失敗や苦しみであるかもしれません。頑張って乗り越えれば、その先に待っているのは、断崖絶壁かもしれないのです。
 困難に直面したときには、立ち止まって、その困難がどんな意味であるかをよく考える必要があると思います。その困難が成長のために必要なもの、乗り越えるべきものであれば頑張って乗り越えなければなりません。ですが、もしその困難が神様のストップ・サインなら、むしろ進む方向を変えなければならないのです。たとえ遠回りになったとしても、神様が準備してくださった道ならば、それが一番の近道に違いありません。我を通さず、神の御旨を通す生き方を選びたいと思います。
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