祈りの小箱(177)『たった一人の心に届く言葉』


『たった一人の心に届く言葉』
 ユダヤ教に「1人を救う者は、全人類を救う」という諺があると聞きました。教会で働いていると、このことを実感することがときどきあります。例えば、信徒から人間関係での悩みなどの相談を受けたときです。相手と一緒に苦しみながら、時間をかけて共に祈り、共に考えていると、やがて問題を乗り越えていく道が少しずつ見えてきます。不思議なのは、そのようにして示された道は、他の人の悩みににも根本的な部分で当てはまることが多いのです。
 1人の人としっかり向かい合い、1人の人が置かれた状況に立ち向かっていく中で、すべての人に当てはまる普遍的な答えに出会うことがある。そう言ってもいいかもしれません。たった1人の心にしっかりと届く言葉は、すべての人の心に届くものなのです。
 全ての人を救うための道は、目の前の1人にとことん向かい合う中でしか示されない。それが、教会の司牧の現場での実感です。気持ちがはやると、ついたくさんの人に福音を伝え、たくさんの人を救いたいと思ってしまうものですが、そんな思いは上滑りするだけで実現することがありません。たくさんの人を救いに招きたいなら、目の前のたった1人としっかり向かい合う以外にないのです。全人類を救いに招きたい。その燃え上がる思いを、まず目の前にいる1人に注ぎたいと思います。 
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