祈りの小箱(226)『悪魔との戦い』


『悪魔との戦い』
 イエズス会創立者、聖イグナチオは『霊操』という本の中で「二つの旗」という祈り方を紹介しています。バビロンの荒野に悪魔の軍団とイエス・キリストの軍団が対峙しているところを祈りの中で生々しく想像し、自分はどちらの側につくかを決めるという祈りです。『霊操』の中で、イグナチオは悪魔がどんな策略を使って人間を破滅させるかも克明に紹介しています。
 悪魔とイエス・キリストが対峙する戦場、それは実は、バビロンではなくわたしたち自身の心の中にあるとわたしは思います。わたしたちの心こそが、悪魔とイエス・キリストの対峙する決戦場なのです。悪魔はまずわたしたちにさまざまなものを与えて思いあがらせることから始めます。そして、わたしたちを思いあがらせ、傲慢な心で神に背き、自分の欲望の赴くままに行動するように仕向けるのです。やがてわたしたちは、自分の思った通りにならない相手に対して腹を立て、憎しみを抱くようになります。わたしたちが憎しみのままに行動し、相手と戦い続ける地獄に落ちるなら、それは悪魔の勝利です。
 もしイエス・キリストの陣営に入って神のために戦いたいなら、憎しみに対して愛で立ち向かうしかありません。謙遜な心で相手と向かい合い、相手の欠点ではなくよいところを見ること、何があっても愛し抜くことで、相手と自分を滅ぼそうとしている悪魔と戦うのです。悪魔を倒すために、愛以上の武器はありません。もしわたしたちが相手に対して憎しみの炎を燃やすなら、相手の心の中にすでに入り込んで荒れ狂っている悪魔は大喜びするでしょう。憎しみの炎以上に、悪魔を喜ばせるものはないのです。燃え上がった憎しみの炎は、相手とわたしたちを焼き尽くすまで消えないでしょう。
 ですが、もしわたしたちが憎しみを抱かず、穏やかな愛によって相手を包み込もうとするなら、相手の心の中にいる悪魔は大変に困ります。穏やかな愛は、悪魔がせっかく燃え上がらせた憎しみの炎を弱めてしまうからです。憎しみの炎が弱まり、悪魔の勢力が衰えると、相手の心の奥底にいて劣勢に立たされていた愛の勢力、すべての人間の心の中におられるイエス・キリストが力を取り戻します。劣勢に立たされていた愛の軍勢が力を得て内側らからも悪魔の陣営に攻め込むとき、ついに悪魔は相手の心から逃げ出さざるを得なくなります。こうして、わたしたちが憎しみに対して愛で立ち向かうとき、神が勝利するのです。
 大切なのは、「自分が勝つか、相手が勝つか」ということではありません。悪魔が勝つか、神様が勝つかということです。憎しみが勝つのか、愛が勝つのか。わたしたちはどちらの陣営につき、どちらを勝たせたいと願っているのか。それが問われているのです。何があっても神の側につき、愛を守り抜くと、堅く決心できるよう祈りましょう。
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