避難所からの声
震災直後から避難所にボランティアに入っている二本松教会の信徒会長、柳沼千賀子さんの案内で、二本松市内の避難所を周ってボランティア、市職員、そして被災者の方々から話をうかがった。二本松市内の避難所には、原発の周囲20キロ圏内にある大熊町、双葉町、浪江町から来られた方が多いとのことだった。
隙間風の入る体育館の床の上でのプライバシーのない生活を強いられてすでに1ヶ月、被災者の方々の間に大きなストレスがたまっているらしいことが、時折聞こえる携帯電話の荒々しい会話の声や床の上に力なく寝そべる人々の表情からうかがえた。市職員の方の話では、放射能のためにいつ家に帰れるか分からない、行方不明の肉親を捜しに行くことさえできないという原発に固有の問題がストレスに拍車をかけているとのことだった。すでにストレスはピークに達しており、これ以上続くならば被災者の心のケアが深刻な課題になるだろうと指摘するボランティアの方もおられた。傾聴ボランティアやカウンセリングなどでのボランティアが必要になってくるのかもしれない。宗教者に、ぜひ心のケアをお願いしたいとの声もあった。
新学期を控えて、体育館の一室におかれたテーブルで勉強する小中学生の姿も見かけた。もうじき入学式だが、小中学校に入学する子どもたちはこちらの学校にとりあえず入学することになるそうだ。勉強に適した環境ではないが、子どもたちの勉強不足を補うため、春休みのあいだ柳沼さんのように教師の経験があるボランティアたちが子どもたちに勉強を教えていたという。ボランティアの中には、春休みを返上して東京からやってきたという現役の教師の方もおられた。避難所では、新学期になっても学校が終わった後の時間に学習補助のボランティアを続けていくとのことだった。
「一体、いつになったら帰れるんだ。いい加減にしてくれ」と携帯電話に向かってどなる男性の悲痛な声が、心に深く響いた。まったく先の見えない不安の中で、人々の心が救いを求めて叫んでいる、わたしにはそのように感じられた。
※写真の解説…二本松市内の避難所の様子。