バイブル・エッセイ（1170）神を愛する - 片柳神父のブログ「道の途中で」

神を愛する

「あらゆる掟のうちで、どれが第一でしょうか。」イエスはお答えになった。「第一の掟は、これである。『イスラエルよ、聞け、わたしたちの神である主は、唯一の主である。心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』第二の掟は、これである。『隣人を自分のように愛しなさい。』この二つにまさる掟はほかにない。」律法学者はイエスに言った。「先生、おっしゃるとおりです。『神は唯一である。ほかに神はない』とおっしゃったのは、本当です。そして、『心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、また隣人を自分のように愛する』ということは、どんな焼き尽くす献げ物やいけにえよりも優れています。」イエスは律法学者が適切な答えをしたのを見て、「あなたは、神の国から遠くない」と言われた。もはや、あえて質問する者はなかった。(マルコ12:28b-34)

「あらゆる掟のうちで、どれが第一でしょうか」と尋ねる律法学者に、「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」という掟こそが第一だとイエスが答える場面が読まれました。ですが、「神を愛しなさい」と言われても、すぐピンとこない人も多いでしょう。「神を愛する」とはいったいどういうことなのでしょう。
「神を愛する」とは、神さまがわたしたちに注いでくださる愛に気づき、神さまに感謝することだとわたしは思っています。「わたしたちが神を愛するときにだけ、神さまはわたしたちを愛してくださる。だから、神さまを愛さなければならない」ということではなく、「すでに豊かに注がていれる神さまの愛に気づき、神さまに感謝せずにいられなくなる。神さまを愛さずにいられなくなる」、それが「神を愛する」ということなのです。神さまは、わたしたちが神さまの愛に気づかず、神さまに不満を言っているとき、道を踏み外して迷子になっているときでも、わたしたちをやさしく見守り、変わらぬ愛を注いでくださっています。その愛に気づき、「こんなわたしでさえ、神さまは見捨てず、見守り続けていてくださった。神さま、ありがとうございます」と心の底から思う。それが、「神を愛する」ということなのです。
　わたしたちが、いまこうして生かされていることにまず感謝したいと思います。神さまは、こんなに弱くて罪深いわたしにさえ、生きる力を与えてくださる。食べる物や着る物、住む所を与え、こんな自分をあたたかく迎え入れてくれる仲間たちさえ与えてくださる。そのことに気づくとき、わたしたちは神さまに心の底から感謝せずにいられなくなります。自分がいま、こうしてここに生きていること。そのことの神秘に気づき、どこまでも深く感謝していく。それが、「心を尽くし、精神を尽し、思いを尽して神を愛する」ということなのです。
　神さまを愛するとき、わたしたちは、神さまが与えてくだった隣人たちを愛さずにはいられなくなります。神さまからいただいたものは、わたしたちにとって、すべてかけがえのない大切なものだからです。自分と同じ、「かけがえのない大切な神さまの子ども」として隣人を見るとき、わたしたちは、その人のために何かせずにいられなくなります。相手が困っているなら、助けの手を差し伸べずにいられなくなるし、悲しんでいるなら、そっと寄り添って支えずにいられなくなるのです。第二の掟である、「隣人を自分のように愛しなさい」は、すでに第一の掟に含まれているといってよいでしょう。神を愛するなら、わたしたちは隣人を愛さずにいられなくなるのです。
　他のすべての掟も、第一の掟の中に含まれます。なぜなら、「神を愛する」とは、「神のみ旨のままに生きる」ということであり、すべての掟はこのことに集約されるからです。神のみ旨のままに生きて、この地上に「神の国」を実現する。それが、「神を愛する」ということなのです。どんなときでも神さまへの感謝を忘れず、神さまの愛の中で、神さまのみ旨のままに生きられるよう、心を合わせてお祈りしましょう。

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