バイブル・エッセイ(1084)生きた石

生きた石

「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして、わたしをも信じなさい。わたしの父の家には住む所がたくさんある。もしなければ、あなたがたのために場所を用意しに行くと言ったであろうか。行ってあなたがたのために場所を用意したら、戻って来て、あなたがたをわたしのもとに迎える。こうして、わたしのいる所に、あなたがたもいることになる。わたしがどこへ行くのか、その道をあなたがたは知っている。」トマスが言った。「主よ、どこへ行かれるのか、わたしたちには分かりません。どうして、その道を知ることができるでしょうか。」イエスは言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。あなたがたがわたしを知っているなら、わたしの父をも知ることになる。今から、あなたがたは父を知る。いや、既に父を見ている。」フィリポが「主よ、わたしたちに御父をお示しください。そうすれば満足できます」と言うと、イエスは言われた。「フィリポ、こんなに長い間一緒にいるのに、わたしが分かっていないのか。わたしを見た者は、父を見たのだ。なぜ、『わたしたちに御父をお示しください』と言うのか。わたしが父の内におり、父がわたしの内におられることを、信じないのか。わたしがあなたがたに言う言葉は、自分から話しているのではない。わたしの内におられる父が、その業を行っておられるのである。わたしが父の内におり、父がわたしの内におられると、わたしが言うのを信じなさい。もしそれを信じないなら、業そのものによって信じなさい。はっきり言っておく。わたしを信じる者は、わたしが行う業を行い、また、もっと大きな業を行うようになる。わたしが父のもとへ行くからである。」(ヨハネ14:1-12)

「わたしを信じる者は、わたしが行う業を行い、また、もっと大きな業を行うようになる」とイエスはいいます。「イエスを信じて心を一つにするなら、イエスの愛の中でわたしたちが力を合わせるなら、いま行っている以上のことができるようになる」ということでしょう。「わたしたちは神さまから愛されている。一人ひとりが神さまの子ども、かけがえのない命なのだ」と確信した人たちが心を一つにするとき、そこに奇跡が起こるのです。

 ペトロはこのメッセージを、「あなたがた自身も生きた石として用いられ、霊的な家に造り上げられるようにしなさい」という言葉で伝えています。「生きた石」とはどういうことでしょう。それは、神さまの愛を確信し、決して揺るがないということです。すぐに、「こんなわたしでは駄目だ」と思って自分に与えられた使命を投げ出すようでは、まだ石ではなく泥だといってよいでしょう。やわらかい泥を積み上げたところで、堅固な建物を作ることはできません。「神さまはこんなわたしでも愛していてくださる。こんなわたしにさえ、わたしにしかできない大切な役割を与えてくださった」という堅固な確信があってこそ、わたしたちは、自分に与えられた持ち場をしっかりと守る、堅固な石になることができるのです。

 信仰によって支えられた「生きた石」であるわたしたちを使って、神さまは教会という大きな建物を造られます。使徒言行録に「わたしたちが、神の言葉をないがしろにして、食事の世話をするのは好ましくない」と記されている通り、神さまは、教会という建物の中で一人ひとりに異なった使命を与えられます。ある人にはみ言葉の奉仕、聖書の言葉を人々に語り伝える使命が与えられ、ある人には食料をみんなに配る使命を与えられるのです。

 ここで気をつけなければならないのは、目立つところや高いところに置かれているからといって、その石が優れているわけではないということです。イエス御自身は、「隅の親石」となったといわれますが、それは最も力がかかる建物の片隅で、全体を支えている石ということでしょう。自分の置かれた片隅で、力を尽くすことにこそ意味があるのです。神さまはわたしたち一人ひとりをよく知り、それぞれに一番あった場所に置いてくださいます。置かれた場所で、精いっぱいに自分の使命を生きる人、その人こそが「生きた石」だといってよいでしょう。

 キリストにおいて示された父なる神の愛を信じる者、石のように堅固な信仰を持った者は、「生きた石」となってより大きな業を行うようになります。泥のようにすぐ崩れてしまいがちなわたしたちの信仰を、聖霊が強めてくださるように。一人ひとりが「生きた石」となって、すべての人が安らげる神の家をこの地上に作ることができるように、心を合わせてお祈りしましょう。

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