カルカッタ報告(71)8月28日ジャイナ教寺院


 次にポーロさんは、わたしたちをジャイナ教の寺院に案内してくれた。タゴール家からそれほど遠くない場所だった。
 観光ガイドに紹介されるだけのことはあって、とてもきれいな寺院だった。建物の一面にきらびやかな装飾が施されている。特に、色ガラスの装飾が特徴的だった。ジャイナ教徒のほとんどは商人で、彼らが巨額のお布施をして建てた寺院だとポーロさんは言っていた。厳格な戒律を守ることで知られるジャイナ教だが、その戒律を守りきれない一般信徒たちは寺院に布施をすることでその埋め合わせをしているらしい。
 偶像崇拝を嫌うためにご本尊のようなものはないそうだ。その代わり、本殿の中はシャンデリアや色ガラス、宝石などで入念に飾り付けられていた。特に印象的だったのは、両側面が鏡の回廊だ。自分の姿が鏡に無限に写っていくと、その彼方に解脱の世界が開けるそうだ。
 ジャイナ教と言えば不殺生の戒律を特に厳しく守ることで有名だが、イエズス会にまつわるジョークでジャイナ教徒に顕微鏡を見せたという話がある。あるイエズス会員が熱心なジャイナ教徒に水を顕微鏡で見せた。水の中に無数の微生物が生きていることを知ったそのジャイナ教徒は、ショックを受けて水を飲むことをやめ、衰弱死したというのだ。イエズス会員は、そういうことをするから嫌われるのかもしれない。
 きれいな本殿の前で記念撮影をして、わたしたちはジャイナ教寺院を後にした。次の目的地はビクトリア・メモリアルだったが、渋滞の関係で時間が押しているために車窓からだけの見学になった。日が沈む前にカーリー寺院に着かなければならないから、まあやむをえないだろう。マイ・ダーンの南の端にあるビクトリア・メモリアルの壮麗な建物を横に見ながら、わたしたちは一路カーリー寺院へと向かっていった。
※写真の解説…ジャイナ教寺院。